ブログが3456HITした際にいただいたリクエスト作品です!
「両親(蒼操)が喧嘩してしまい、板挟みになって困る若葉ちゃん(年齢はいくつでも)」
リクエストしてくださったrukoさま、ありがとうございました~! 年齢はいくつでも、とおっしゃっていただいたので、若葉4歳にしてみました。実際の4歳児との相違は見逃してください。15歳版の両親喧嘩も書いてみたいな。
以下ボタンをクリックしてお読みください~。
※あえて漢字を必要最小限にしています。ハイパー読みづらいです、ごめんなさい※
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しのもりわかばは四つになりました。
四つだから、もうお手つだいもできます。おさらをはこんだり、おせんたくものをわたしたり、とにかくかあさまのお手つだいができるのです。お手つだいをすると、かあさまはよろこんでくれるので、へへんとほこらしくなります。
わかばは、かあさまがだいすきです。
かあさまはいつもにこにこしていて、やさしくて、たくさんのことをおはなししてくれるのです。かあさまのつくるごはんはおいしいし、わかばを見ると、「若葉~」と言ってぎゅっとしてくれます。ぎゅっとされると、かあさまのとってもいいにおいがして、すごくあんしんするのです。
わかばは、とうさまもだいすきです。
とうさまはにこにこしないけれど、やさしくて、たくさんのことをおしえてくれます。ひくくてやさしい声で、「おいで」とだっこしてくれます。わかばがおへやに行くと、とうさまはわかばをひざにのせて、頭をなでてくれます。とうさまの手は大きくて、あたたかいので、思わず、ふふっ、とうれしくなってしまいます。
三人でいっしょにいるときは、とうさまとかあさまが、わかばの頭の上のほうでおしゃべりしたりします。かあさまがおはなしするのを、とうさまはじいっときいています。そんなじかんも、わかばはだいすきでした。わかばには、とうさまとかあさまが、なにをおはなししているのか分かりません。けれどときどき、かあさまがわかばを見て、「ねー、若葉」とにこっとするので、「ねー」とか、「うん」とかとおへんじをします。すると二人がわらうのです。わかばはなにもおかしいことはしていないのに、ちゃんとおへんじしたのに、それでも二人がわらうので、どうしてわらうのかなあ、とおかしくなって、わかばもわらうのです。
とうさまもかあさまも、おひるはおしごとでいそがしくしています。なので、わかばは一人であそんだりします。一人でおままごとをしたり、おりがみをしたりするのも楽しいですが、三人でいるときのほうがずっと楽しいです。だいすきなとうさまとかあさまを、わかばがひとりじめできるからです。でも、ひとりじめするのはよくないことなので(ごはんやおやつは、みんなで分けなければいけません)、ひとりじめだ、と思ってはいるけれど、口には出しません。
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「わーかば」
わかばはさいきん、とうさまといっしょにねむっています。
とうさまは、おふろから上がり、おきがえしたわかばを、だっこして、おふとんにつれていってくれます。そうして、おふとんでご本をよんでくれるのです。きょうは、きのうのつづきからです。それが楽しみで、わかばは早足でおへやに向かいました。
すると、おへやには、とうさまと――かあさまがいたのです。いつもなら、かあさまはまだおしごとをしているので、わかばはびっくりしました。
「若葉。今日は、母様と一緒に寝よう」
かあさまは、おしいれからおふとんを出しながら、そう言いました。わかばはうれしくなりました。とうさまといっしょにねるのもすきですが、かあさまとねるのもすきなのです。わかばは、てちてちとかあさまのもとにかけよりました。
「かあさまとねるの?」
「そう。いや?」
「ううん!」
「でしょ。ふふ。じゃあ母様と寝よう」
しきおわったおふとんの上で、かあさまが、ぱっ、とうでを広げました。おいでのあいずです。わかばはうれしくって、にこにこしながらそのうでに――
「若葉」
とびこもうとすると、とうさまの声がしました。とうさまは、かあさまよりおくの、つくえのところにすわっています。ふしぎなことですが、おふとんはこちらとあちら、二つしかれていたのです(いつもなら、わかばがねるときには、ひとつしかありません)。とうさまはこちらをじっと見て、ぽん、ととうさまの近くのおふとんをたたきました。
「昨日の続きを読む約束だったろう。こちらに来い」
こちらにこい、というのは、とうさまの「おいで」といういみです。よばれたら行かなければなりません。わかばはかあさまを見上げて、かあさま、ちょっとまっててね、と言いました。たまに、かあさまといるときに、こうしてとうさまがわかばをよぶことがあります。そうするとかあさまは、もう、しょうがないなあ、と言って、にこにこしながら、わかばをはなしてくれるのです。
けれど今日のかあさまはちがいました。
わかばをひょいっとひざにのせて、ぎゅ、としてきたのです。あれ? どうしたのだろう? とかあさまのお顔を見上げると、かあさまはちょっとおこったような顔をしています。
「……今日はあたしと寝るんだって。いいじゃない。一週間ずうっと蒼紫さまと一緒だったんだから」
かあさまがしゃべると、つぎはとうさまの番です。わかばは、こんどはとうさまを見ました。
「……昨日読んだ本がまだ終わっていない。今日続きを読むことになっている。子どもの手前、約束を破るような真似はできん」
「そう? じゃあ代わりにあたしが読んであげるよ。そのくらいできるもん」
「ほう」とうさまがふっとわらいました。「それは初耳だな」
「馬鹿にしないでよ! あたしだって本くらい……」
とつぜん、ぐらりとひざがうごきました。わかばはびっくりして、かあさまにぎゅっとしがみつきました。ひざはすぐにもどって、見てみると、かあさまがご本を広げています。今のはきっと、とうさまからご本をうけとるためにうごいたのだな、と思いました。かあさまはご本をぱらぱらとめくって、すぐにぴたっとかたまりました。
「…………」
「どうだ」
「………………」
わかばも、かあさまのうでのすきまから、ご本をのぞきこみました。ひらがななら少しだけよめますが、このご本にひらがなはありませんでした。丸や線がたくさんならんでいます。くるんと丸まったりしているところもあります。わかばにはなにがなんだかさっぱりです。とうさまはそれをすらすらおはなししてくれるので、すごいなあと思っています。
かあさまにご本をよんでもらうことは、なかなかないので、わかばは「かあさま、よんでくれるの?」とききました。きのうは、とうさまに、赤ずきんちゃんがおばあちゃんのおうちについたところまでよんでもらったのです。このあとどうなるのか、が、とてもきになります。
「かあさま、よんでくれるの?」
「……え、ええと……」
「おばあさんはおおかみやっつけられたの?」
「えっ……そんなお話なの……?」
「無理だろう」
こまった顔のかあさまに、とうさまがぼそりと言いました。うでのすきまから見ると、とうさまはちょっとうれしそうな顔をしています。
とうさまはいつもまがおです。まがお、というのは、とうさまのお顔のこと(とうさまはとてもかっこういいので、きっとそのお顔のこと)を言うのだそうです。かあさまのように、わらったり、おこったり、したところを、わかばはあまり見たことがありません。いつもほとんど同じお顔をしています。なので、わかばには、とうさまがいつもとちがうお顔をしているのが、すぐに分かります。今のとうさまも、そうです。いつもよりちょっとうれしそうです。どうしてなのかは分からないけれど。
「そういうわけだ。若葉は今日は俺が寝かしつける。お前はまだ仕事があるのだろう」
「嫌」かあさまは、わかばをぎゅっとし直しました。「……今日はあたしが若葉と寝るの」
「駄々をこねるな」
「駄々こねてるのは蒼紫さまでしょ。自分ばっかり若葉可愛がって。ずるいよ。あたしだって若葉と一緒に寝たいもん。あたしお母さんだよ?」
「ずるいという話ではなかろう。親だというならば俺もそうだ。道理は通る」
「そういう問題じゃないの!」
「大声を出すな。若葉が驚く」
頭の上でとうさまとかあさまがおはなしをはじめました。やっぱり、二人がなにをおはなししているのか、わかばにはよく分かりません。
だんだんと二人の声が大きくなってきました。あいかわらず、なんのおはなしをしているのかは分かりませんが、声が大きいとどきどきしてしまいます。わかばがほんのちょっとのいたずらをして、しかられるときのような声だからです。ひょっとして、わかばはなにかわるいことをしてしまったのでしょうか。でも、二人はちっともわかばを見ません。わかばには、まるで、とうさまがかあさまを、かあさまがとうさまをおこっているように見えました。どうして二人はおたがいをおこっているのでしょう。こんなふうになったことは、今までいちどもありません。
「若葉は、あたしのことのほうが好きなの。今日はあたしと寝るって、さっきすごい嬉しそうだったじゃない」
「その度合いで言うなら若葉が好いているのは俺だ。昨年の七夕の短冊を忘れたわけではないだろう」
「父様のお嫁さんになるって? あれは蒼紫さまが自己申告で言ってきたから、あたしが書いてあげただけでしょ。第一、若葉はあたしに短冊書いてって持ってきたんだもん。頼りになるのはあたしってことだよ」
「俺に書けと言わなかったのは照れていたからだ。本気で俺のことが好きならばそうもなる。お前もそうだった」
「あたしはそうだったけど若葉もそうかどうかは分からないでしょ! ていうか、若葉を本気でお嫁さんにしようと思ってるのどうかと思うよ。そんなことしたらあたしはどうなるの?」
「十年経って若葉が同じことを言うなら、県令にでもなって重婚を許可する法令を作るしかあるまい」
「無茶言わないでよ! もう埒が明かない」
はあっ、とかあさまがいきをはきました。それだけでわかばはふあんになりました。かあさまは、こまったときに、よくこうしていきをはくのです。
「若葉」かあさまがわかばを見下ろしました。「父様と母様、どっちが好き?」
「え?」
わかばはこまってしまいました。とうさまとかあさま、どちらもだいすきだからです。
「若葉は母様のほうが好きだよね?」
「操。それは誘導だ」
「ね、若葉?」
とうさまの声がしますが、かあさまは気づいていないようです。じいっとわかばを見てくるので、わかばはちょっぴりうれしくなりましたが、かあさまの声やお顔は、あまりにこにこしていません。いつもなら、もっとやさしいのです。それが、こまっているような、おこっているような、そんなむずかしいお顔をしていました。
そんなかあさまを見ているうちに、わかばはすっかりこまってしまって、なにも言えませんでした。すると、とうさまが、
「若葉。父か母か、お前の好きなほうと眠れ。ただし母は昨日の続きは読んでやれんぞ」
「つづき……」
「そうだ。気になるだろう。今日も父と眠るか」
わかばはがんばって、ぴょこ、とかあさまのうでから顔を出しました。とうさまが見えます。とうさまのよんでくれるご本のつづきは、気になります。これからおばあさんとおおかみのけっとうがはじまるのです。おばあさんは、赤ずきんちゃんが来るまでにおおかみをやっつけられるのか……今日一日、わくわくしてまっていました。とうさまとねむれば、楽しみにしていたつづきをよんでもらえます。
でも……。わかばはかあさまを見上げました。とうさまにご本をよんでもらうのが楽しくって、ちかごろはかあさまとねむっていません。朝になれば、かあさまがとなりのおふとんにいるけれど、夜にかあさまといっしょのおふとんに入ることは、さいきんはないのです。そう思うと、かあさまともいっしょにねたくなってきました。かあさまは、ご本はよんでくれませんが、いっしょにおしゃべりしてくれます。おうたもうたってくれます。かあさまの声をきいていると、なんだかほわほわとしてきて、ねむくなってしまうのです。
「若葉。母様のほうが好きだもんね?」
「誘導尋問はよせと言っている。若葉、おいで」
「違うよね、若葉は母様のこと好きなんだもんねー」
「決めつけるな。さあ、若葉」
とうさまとかあさまと、二人の声がふってきました。
いつものやさしい声ではありません。いつもより力強くて、おもくて、ざあっと頭からおゆをかけられたような気もちになりました。わかばは、とうさまとかあさまのお顔を見くらべました。二人とも、おこったようなこまったような、見たことのないお顔をしています。どちらかを見ると、どちらかが「若葉」とわかばをよびます。とうさまとかあさま、どちらを見てもどちらかがおこったようなお顔になります。
わかばはもうすっかりこまってしまいました。どうしたらいいのか分かりません。かあさまもとうさまも、どうしてこんなふうに言うのでしょう。いっしょうけんめいかんがえますが、だめです。わかばは二人ともだいすきなのです。どちらのほうがすきか、なんて、えらべません。どちらも同じくらいだいすきなのです。それなのに、それなのに……。
どうしたらいいか、がんばってかんがえましたが、やっぱり分かりません。そうしてるあいだにも、頭の上でとうさまとかあさまがおはなしをつづけます。その声も、おこったようなこまったような、そんな声なのです。
とうさまとかあさまが、そんなふうに――ぴりぴりとして、ひくい声で、おたがいをおこっているように――おはなししているのをきいていると、わかばは、かなしくなってきました。こんな二人は見たことがないのです。なんだかこわくなって、かなしくなって、どうしたらいいのかも分からないので、わかばはなきそうになります。
ふええ、とないてしまうのを、ぐうっとがまんして、わかばはがんばってかあさまのうでをだっしゅつしました。かあさまが、「若葉?」と言いましたが、おへんじするとないてしまいそうだったので、おへんじしません。
かあさまのすわったおふとんからおりて、わかばは、とうさまとかあさまのあいだにすわりました。とうさまとかあさまのお顔が、りょうほう見えるところにすわって、
「わかば、とうさまとかあさま、どっちもすきなの。どっちもすきじゃだめなの?」
ゆうきを出してそう言いました。
わかばの言ったことは本当のことです。わかばは、とうさまもかあさまも、二人ともだいすきです。だから、どちらかをえらぶこともできないし、二人にそんなお顔をしてほしくないのです。
「とうさまもかあさまもすきだから、わかば、とうさまとかあさまといっしょにねたい」
言ってみると、かなしい気もちがいっぱいになって、わかばは少しだけないてしまいました。どちらがすきか、ときかれたのに、どちらもえらべなかったから、きっとかあさまたちにしかられてしまいます。けれど、何回かんがえても、二人のどちらかをえらぶことはできませんでした。だって、わかばは二人ともがすきなのです。
わかばが、めそめそ、ないていると、かあさまがわかばの近くにすわりました。しかられる――と思いましたが、かあさまは、わかばのことをぎゅうっとしました。
あれ? しからないの? わかばはふしぎに思いました。けれど、かあさまにぎゅっとされると、どうしてか、もっとなみだが出てきました。するとかあさまは、「若葉、泣かないで、ごめんね、わー、泣かないで」と言いました。
どうしてかあさまがごめんなさいするのでしょう。それもぜんぜん分からなくて、わかばはかあさまにぎゅっとしました。
「若葉、ごめんね、泣かないで。あたしが悪かった。ごめんね」
「……どっちもすきなの……」
「うん。そっか。どっちも好きなんだよね。ごめんね。もう喧嘩しないから。ごめんね、泣かないで」
おそるおそる、わかばはかあさまのお顔を見上げました。かあさまはすっかりいつもどおりのにこにこ顔で、わかばはあんしんしました。けれど、
「……どうして、かあさまもないてるの?」
かあさまのおめめが、少しだけうるうるになっていたのです。かあさまはなにもしていないのに、へんだなあ、とわかばが首をこてんとすると、かあさまはまたわかばをぎゅっとしました。
とつぜん、あたりがまっくらになりました。とうさまのにおいがします。わかばのせなかから、こんどはとうさまが、わかばとかあさまをぎゅっとしたのです。そうしてとうさまも、わかばに「すまん」と言いました。すまん、というのは、とうさまの「ごめん」です。わかばはやっぱりふしぎになって、「どうしてとうさまとかあさまがごめんねするの?」とききました。するととうさまが、ぎゅっとしていた手をはなして、わかばの頭をなでました。とうさまの手はあたたかくて、なでられると気もちいいのです。いつもどおりの手でした。それから、お顔も、いつもどおり――少しだけにこっとしたお顔です。
とうさまはそのお顔のまま、わかばの頭の上で、かあさまになにか言いました。かあさまがそれにおへんじしています。わかばは、とうさまに頭をなでられたままです。それでも、とうさまとかあさまが、またこわいお顔にならないかしんぱいで、ぐっと上を見ました。そうすると、わかばの頭にのっていたとうさまの手が、わかばの顔にのりました。おめめをかくされてしまって、二人が見えません。もしかして、またむずかしいおはなしをするのかな、とどきどきしましたが、きこえてきたのはやさしい声でした。おはなしのなかみは分かりませんが、きっとやさしいことをおはなししているのだな、と思いました。
とうさまの手は、少しして外れました。二人のお顔は、いつもどおりやさしいものでした。よかった。わかばはあんしんしました。
それからとうさまは、わかばのおでこをくるっとなでて、おでこにちゅうしてくれました。ちゅうは、すき、とか、ありがとう、とか、ごめんね、といういみです。ちゅうされると、ぴょんぴょんはねたくなるくらいうれしくなります。しかも今日は、とうさまのあとに、かあさまもちゅうしてくれました。わかばはわっとうれしくなって、「わかばも!」とおねがいしました。とうさまとかあさまがくすくすしながらかがんでくれたので、わかばも二人のおでこにちゅうしました。
「若葉。ごめんね。もう喧嘩しないからね」
「けんかしてたの?」
「ああ。済まない」
「けんかってなあに?」
「なあにって……」
「……言い争って、仲が悪くなることだ」
「……けんか、やだ」
「そうだよね。ごめんね、もうしない! 若葉。今日、誰と寝よっか?」
「とうさまとかあさま!」
あれがけんかだというのなら、けんかはもういやです。もしとうさまとかあさまがけんかしたなら、三人でねられなくなってしまいます。とうさまにご本をよんでもらって、かあさまとおしゃべりして、ねむるときになって、わかばはそう思いました。
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よい親御さんは、子どもの前で喧嘩するのは控えましょう(^^)
あえての4歳児目線に挑戦した結果、この読みづらさ…
ご希望ございましたら、ちゃんと漢字変換したバージョンもアップします…!
rukoさま、このたびはキリ番&リクエストありがとうございました!
書いていてとっても楽しかったです。これからもよろしければお付き合いください、またぜひお気軽にお声がけくださいね~!
追記
参考にしたらすごく役に立ったサイト!
【みんなの知識 ちょっと便利帳】小学校で習う漢字かどうかを調べる - 教育漢字
どなたのどんな役に立つかは分かりませんが、ちょっと貼っておきます。べんり~。