monaho

monahoって、エスペラントで、僧侶の意味なんですって。

きょうだいがほしい

 あおみさ一人娘シリーズ、「絶対に御頭が一度は言ってそうなこと」編①

 要するに、オマケの短編です。ちょっとアレだけど定番ネタからひとつぶっこんでいきます。

 ☆「蝶よ華よ」にスター・コメントありがとうございます!

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 「かあさま、かあさま!」
  若葉がてちてちと駆け寄ってきた。あんまり走ると転んじゃうよー、と蒼紫さまに何度も言われたことを、今度はあたしが言っている。不思議な感じ。
 あたしがかがんであげると、若葉はあたしにしがみついて、嬉しそうにぴょんと跳ねた。

 「どしたの? いいことあったの?」

 「うん! あのね、わかばね、はやくねるの!」
 「寝るの?」
 「うん!」
 とにかく嬉しくてしょうがない顔だ。最近若葉はおしゃべりが大好き。言葉をたくさん覚えたからね。でもあたしはさっぱり意味が分からなくて、どういうこと? と困ってしまう。すると若葉は、にこにこしながらお話ししてくれた。
 「あのね、おたんじょうびにね、なにほしいっていわれたの。わかばがうーんっていったの」
 「ん? 誰にお誕生日の話されたの?」
 「とうさま!」
 「父様か。それで?」
 蒼紫さまは若葉にとっても優しいから、誕生日には必ず贈り物をあげるのだ。ちょっと前までじいやと、どちらの贈り物が喜ばれるか、というのを張り合ってたみたいだけど。
 「そしたらね、おとうとといもうと、どっちがいい? っていわれたの。だからわかば、いもうとっていった。だからはやくねるの」
 「待って待って若葉たいむ」
 今さらっとすんごいことを言われた。
 若葉は相変わらずにこにこしている。この子は四歳。自分が言っている意味なんか全然分かっていない。そうだよね、“いもうと”はどこからか貰ってくるものみたいに思っちゃうよね。
 「だからわかばね、はやくねるの。はやくねたらいもうとがくるんだって!」
 そしてとどめがこれである。
 わ、若葉……? どう返事したものかと視線を彷徨わせると、今一番見たくない人・夫の姿があった。しかもこれ見よがしにひなたぼっこしている。なんでよ、普段ひなたぼっこなんかしないじゃない! 蒼紫さま子どもになに吹き込んでんの! ……と叫びたくなったけど、若葉の手前それはできない。ぎりぎり笑顔を崩さずに、「そうなんだー」と強ばった声で言うしかなかった。