monaho

monahoって、エスペラントで、僧侶の意味なんですって。

アラビアン蒼操・予告編

 いや~。

 毎週火曜日にブログに来てる気がする。慶です。

 毎週毎週「今日もイセヤ!」って言って、全然感想書いてない気がする。慶です。

 あっ、ハッピーハロウィン!

 

 最近もろもろ手一杯と噂の慶ですが、今日は予告に参りました。

 「誰得? 俺得!」をコンセプトにした蒼操、イン、アラビアン! です。

 アラビアンな雰囲気が好きなんです~。好きだということに最近になって気づいたんです~。超好きなんです~。あの感じが~。

 なので「あの感じ」を大まじめに追求した蒼操が、現在進行中です。

 

 いかに笑わずに読めるか? が、最大の難関。

 下のボタンからどうぞ。

 

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 あるところに、一人の王がおりました。

 王が治めるのは、東の大国から砂漠を挟んで西隣。地平線の美しい、大変穏やかな国でした。王は平和を愛し、寛容で思慮深く、国民から大層慕われておりました。
 しかし、平和な国を、戦が襲います。
 「東の国を我が物にするのだ!」そう叫ぶのは、王の国の更に西隣、アズイームの王でした。
 王は国を挙げて戦いました。多くの兵が、国や家族を守るために戦地へ赴いたのです。
 アズイーム軍は不思議な武器を使いました。砂漠の向こうからでも届く矢、吸っただけで魂を抜かれる空気、砂に触れると猛火の起こる塊。激戦虚しく――王の国の兵士は、次々に死んでゆきました。
 戦は長いあいだ続きました。王は大変心を痛め、体を崩し、戦の終わらぬうちに息を引き取りました。
 王の亡くなった国は、王の息子を即位させ、ようやく戦を収めることができました。
 おかげで王の国は滅ぶことなく、今も砂漠の向こうで生活をしています。


 潤んだ太陽が昇る。
 日の出の空は、赤い。太陽は何にも遮られずに、我が物顔で空へと上がるのだ。あれに当てられると真黒な影が生まれる。人も馬も、木も。皆その足元に影を引き摺る。遠くにぽつぽつと黒いものが見えた。枯れ木だ。ともすれば砂と同化して見えなくなってしまいそうなものを、一心に陽を受けて、影をもって存在を示している。果てしなく白い砂漠にあって、あの木は異質であった。さながら切り絵か、太陽の模様の一部か。
 手綱を引く。小気味よく駆けていたラマーディ――灰色の馬――は首をゆるやかに降って足を止めた。彼の蹴った砂が、さらさらと流れていく様を、四乃森蒼紫は横目で見る。
 ジョードプリを、白にしてくればよかった。黒は太陽を吸う。手元にあるものを適当に着てきたから、服装はアンバランスである。カミーズは白だが、ジョードプリとシャルワール、カフィーヤは黒だ。口許までを覆うカフィーヤをぐいと下げ、顔をあらわにすると、慣れた砂の匂いがした。照り返しが眩しい。つい先程まで冷えきっていた砂漠が、急速に熱されていくのが分かる。
 この朝焼けを知らぬ民はいない。あの輝く朝日は、神が一等先に我々へと授けてくださるものなのだ。実際、この国に差す朝日を遮るものはない。光は真っ直ぐに差し込み、真白の街並みを躊躇いなく照らす。
 蒼紫とてこの太陽が好きであった。誰より先に太陽に出会う国。その柱となり民を守る、王族という立場。王たる者喜怒哀楽は慎むべし、しかし民にとっては道標であり陽の光であれ。幼い頃からの教えを、素直に実践しようとしていた時期もあった。――だが。
 夜露を吸いに来た小さなトカゲが、追われるように砂に潜っていく。蒼紫は空を見た。燃えるような赤は既に薄れ、入れ替わりに橙と青が伸びてくる。鷹が飛んだ。足元を風が撫ぜていく。砂が舞う。それに擽られたのか、ラマーディが何度か足踏みした。蒼紫はその都度手綱で制したが、太陽の熱に飽きてきたらしい。もう帰ろう、とでも言うようにこちらを見て寄越した。
 「忠義者め」
 皮肉に唇を歪め、蒼紫は再びカフィーヤを巻き直す。鼻と頬、口まで隠れると、肌よりも布のほうが冷たかった。次第に温度の上がるサハラを、黒い装束で戻る。出で立ちだけ見れば、まるで盗賊だ。蒼紫は鼻を鳴らし、馬の腹を蹴った。
陽を背にして彼が向かうのは、朝日を浴びて一際白く輝く宮殿――シャムスザハルの城だ。

 

 「蒼紫さま」
 厩舎で馬に水をやっていると、駆け寄ってくる者があった。灰色のシャルワール・カミーズ。使用人の般若である。
 「……今朝もお出掛けですか」
 「ああ」
 悪びれもせずに蒼紫は答える。般若も蒼紫も、慣れっこなのだ。般若は少年だった時分から蒼紫に仕えていて、かれこれ14、5年の付き合いになる。年齢こそ蒼紫のほうが少しばかり上だが、般若は蒼紫へ小言の言える数少ない臣下の一人であった。
 「彼も、まさか今日まで走らされるとは思っていなかったでしょうね」
 般若はとんとんとラマーディの首を叩いた。皮肉だ。聡い蒼紫に分からぬはずがない。けれど彼はただ浅く笑って、
 「馬にハッジの話が通ずるものか」
 と受け流す。あとは黙ってたてがみを無造作に撫でた。
 「……一度お部屋にお戻りください」
 「なぜ?」
 「お召し物を変えなければ」
 「あの白のカミーズか」蒼紫は眉間に皺を寄せた。「気に喰わん」
 「お父上の追悼記念式典ですよ」
 「玉砕祝賀会だろう」
 言うと般若は黙った。蒼紫は苛立ちを隠しもせずに、息を吐き捨てる。
 「なぜ俺が父の死など喜ばねばならん」
 「……」
 般若とて、分かっている。「追悼」の文字がいつの間にか消え、「祝賀」にすり替わっていること。それを蒼紫がよしとしていないこと。それでもこれは国事であるから、蒼紫が私情で欠席するわけにはいかないこと。一国民ならまだしも、蒼紫は王である。この国の頭。最高権力者にして、全国民の模範。
 「それでも、あなたは王だからです。蒼紫さま」
 それ以外に言いようがなく、般若は絞り出すように言った。
 蒼紫は表情を僅かも変えなかった。眉も口許も強ばらせたまま、緩慢に般若に目を遣る。――般若は、正しい。先王、父の死を“祝賀”する会は、なにも身内だけで行うものではない。国の祝日になっており、今日ばかりは国中が喪に服す。宮殿の正面庭園が開放され、そこまで来て祈っていく者もいる。その奥、宮殿内で行われる式典は、国事だ。たった一人の遺族である自分が出ない謂れはない。般若は正しい――頭では分かる。
 「……。戻る」
 短くそれだけ告げて、蒼紫は自室へと歩いていった。

 

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 こんな感じのなんちゃってアラビアン。イメージは実写のイセヤ蒼紫。

 他でもなく俺得です。ジョードプリとかめちゃくちゃえろい素敵だからググってみてくださああーーい!!!

 同じツボをお持ちの方がいたら嬉しいな。