こう暑いと、プールにだって入りたくもなりますよ……
以下、そんな内容のおはなしです。
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私が、プールに行きたい、と言うと、パパは即反対してきた。
即よ。「プールに行きた」くらいで「駄目だ」よ。「た」と言おうとして、舌を打つか打たないかくらいで、「駄目だ」。
「どうして?」
「駄目なものは駄目だ」
「パパの水着がないから?」
「それもある」
「他には?
「……色々ある」
「それじゃ分からないじゃない」
いつもなら、私の言うことを最後まで聞いてくれるパパが、今日は珍しい。まったく聞く耳なしだ。
「ねえパパ、毎日暑いでしょ。私はみんなで楽しく涼みたいの」
「楽しく涼むのが目的ならなにもプールでなくともいいだろう」
「プールじゃないと味わえない涼しさがあるじゃない~!」
「ともかくプールはいただけない。……若葉、アイスでも」
「もので釣ろうとしないの!」
パパはわりとそういうところがある。ママも私もよく買収されてしまうけど、今日は負けない。暑いもの、プールに行きたい。友だちと……とも思ったけれど、みんなはみんなで忙しいらしい。折角の夏休み、みんな家族と過ごしたいわよね。私もそうだし。そのためにプールを提案したのにこの様だ。
けれど、ここで引き下がる遺伝子なんか、ママからもらった覚えはない。
「……ねえパパ、お願い。ちょっとでいいから」
「……」
「パパとママとプールに行ったらきっと楽しいわ。どうしてもダメ?」
「……」
「話せばママも乗ってくれると思ったんだけど……」
「……市民プールは」パパが絞り出すように言った。「貸切にできたか」
「えっ、貸切?」
「貸切にできるのであれば……考えよう」
「……もしできなかったら?」
「却下だ」
「パパ大好き!」
貸切というのがボーダーラインらしい。パパは人混みが好きじゃないし、水着とは言え見られるのが恥ずかしいのかしら。だとしたらちょっとかわいい。
なんにせよ、私はすぐにスマホを取りに部屋に戻った。パパの機嫌を直す呪文を残して。
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このあと貸切にするには15人以上の人数での予約が必要だと分かり、若葉が苦心しながら「緋村さんでしょ、薫さんでしょ、それから若生さんに…あっ、七塚さんとかは?」と挙げる名前がほぼ男なことに閉口する御頭、が続きます。(続かない)