monaho

monahoって、エスペラントで、僧侶の意味なんですって。

ちびぃ蒼紫と成人操が出くわす話

 タイトルまんまです。ちびぃ蒼紫と操が出くわす話。

 イヤホラちっこい操と蒼紫(15)くらいの話はみなさんわりと書いてらっしゃるし、私も大好きだからわりと書いてるし、じゃないですか。

 その逆ってあんまり見ないじゃないですか。だからやりたかったんですけど、途中で諦めました(爆)

 中途半端なところで終わってます。

 

 巻町操は考える。
 頭が足りないと言われようが、イタチ娘と言われようが、それでも考える。それしかない。考えるしかあるまい。そんな状況に置かれていた。
巻町操は考える。―――確か先程、自分は京の街を歩いていて。外れから子どもの泣き声が聞こえたから行ってみたら、凧を木に引っ掛けてしまっていて。その木がそれほど高いものでなかったから、息をするように登っていって、凧を取ってやって、それから……
 「落ちたんだ……!」
 猿も木から落ちるのであれば、操とて木から落ちるのである。そのままごちんとやってしまって今に至るのだ。考えた結果全く思い出したくないことを思い出してしまった。腑には落ちたが、まだ認めるには至らない。
 「なにがだ。突然駆け込んできて一切の弁明もなしか」
 問題は操が木から落ちたとして、どうして目の前に四乃森蒼紫が、しかも幼い四乃森蒼紫がいるのか、ということだ。

 はたと気づいたとき、操は仰向けに寝転がっていた。地面にである。砂ぼこりに起こされて立ち上がると、そこはどうにも見覚えのある場所だった。京都ではない、というのが直感的に分かった。直感ついでに、振り向けば屋敷があるということも知っている。誰のでもない、御庭番衆の屋敷だ。操は反射的に屋敷へ歩を進めた。どこか夢心地であった。誰の部屋がどこだというのは体が覚えている。ふわふわと彷徨うような足取りが、次第に元気を取り戻して、最後には走り出していた。
 ここは御庭番の屋敷。あの頃のまま。この角を行った先が、蒼紫さまのお部屋!
 これは夢だ、と頭の隅ではそんなことを唱えていた。いくら操でも、京都から東京―――それも江戸にいきなり移動することなど不可能だというのは知っている。これは夢だ。たくさんたくさん見た、みんなでお屋敷に住んでいた頃の夢。あの夢ではいつも蒼紫が部屋で背を向けて座っていて、私はそこに駆け寄っていくのに。
 「蒼紫さま!」
 すぱんと勢いよく襖を開けた。いつもの本棚。いつもの畳。いつもの背中―――が、小さい?
 鬱陶しそうにゆるりとこちらを振り向いた顔は間違いなく蒼紫のものだったが、間違いなく操の知らない蒼紫だった。見たことのない表情とかそういうことではなく、知らないのである。正確に言えばほとんど覚えていない、蒼紫の幼いころの、顔。
 年の頃十三か四、といったところか。元服前の、長い髪を結っている蒼紫である。それがさも不満げに、
 「誰だ貴様」
 と、眉間に皺寄せ言うのである。これには平時あれだけ蒼紫を慕い、敬い、公然と愛す操も、「……かわいい!」と漏らさずにはいられなかった。

 そして、今。
 操は蒼紫と正面から向き合う形で、取り敢えず正座した。
 一瞬我を忘れて「かわいい!」と言ってしまったのが悪かったのか、それともよすぎる勢いで部屋に入ってきてしまったのが悪かったのか、蒼紫は思い切り不愉快ですという顔をしている。操は操で、どうしてこうなったかをばっちり思い出してしまったので、自分の間抜けさと恥ずかしさとその他の諸々で動けずにいた。否、目の前にいるのが蒼紫ならば、条件反射で飛びつきたくなるのが操だ。けれどそれをしないのは前述の理由と、それからこの年(恐らく十代前半)の蒼紫が、この年―――二十歳と二つ過ぎの操を知らないからである。知らない娘に抱きつかれるなど蒼紫でなくとも驚くだろうし、蒼紫ならば尚更嫌がるだろう。そんなところに考えが至るくらいには操も大人になった。
 それと不可解なことがひとつある。実は操は先程から密かにふくらはぎをつねってみているのだが、これが、痛い。
 「下女であると言ったな」
 誰だと問われ、忍装束でなかったので、そういえば咄嗟に下女だと名乗ったのだった。
 「えっ? あっ、あぁうん、そう、です」
 「用はないし呼んだ覚えもない。下がれ」
 「あぁー……はい」
 しなしなとしぼむような声で返事をする。蒼紫はそれを聞き終わる前にくるりと背を向けてしまった。
 ―――そっけない。
 前々から知っていたことであり、そこが蒼紫らしいとも思うが、十代の蒼紫はこんなに冷たかっただろうか? 自分が三つ四つの頃だからもうはっきりとは覚えていないが、それにしてももう少し優しかった気がする。子ども相手だったからだろうか。

 

 …続くとしたらここにちびぃ操が出てきて、ちび操には優しくしてくれるけどでけぇ操にはやっぱり冷たい蒼紫を見てみさちゃんが喜ぶやらイライラするやら、というのを想像していたんです。グヘェ…